はじめに‥
腱は筋の張力を骨に伝える軟部組織であり、柔軟性に富んだ組織です。
付着する筋形態変化によりバネのように弾性エネルギーを蓄える特性も有しています。
アキレス腱などが代表的な腱組織です。
解剖学
腱は主に3つの部分に分けられています。
- 腱実質部
- 腱付着部
- 筋接合部
腱の主要構成要素は水分が70% 腱細胞、細胞外基質(コラーゲンと非コラーゲン)が30%を占めています。
30%の腱細胞、細胞外基質の内約85%がコラーゲンで構成されています。(Ⅰ型コラーゲン80%Ⅲ型コラーゲン5%)
腱実質部
腱実質部は長軸方向に対してコラーゲン繊維が平行に配列されているため、単一方向への引張負荷に対応しやすいような構造となっています。
コラーゲン線維の各層はパラテノンやエピテノンなどの結合組織層に囲まれています。
腱のコラーゲン線維は安静時には縮んだような構造をしており筋張力がかかると伸張されて弾性エネルギーを蓄えます。
腱付着部
柔軟性のある腱から硬い骨に徐々に移行する部位です。
腱→非石灰化線維軟骨層→石灰化軟骨層→骨の順に線維が移行します。
この線維軟骨は腱と骨の中間くらいの強度を持っており、力の伝達・吸収に優れています。
また、これらの軟骨細胞は高い水分保有能を有することができ、高度な衝撃吸収材として機能しています。
筋腱接合部
筋腱接合部では腱のコラーゲン線維が筋細胞突起によって構成される陥凹部に入り込むため組んだ指のような構造をしています。
この構造の効果としては接着面積が増えることで力学的ストレスが分散されやすい効果があります。
血管・神経
腱は筋に比べて圧倒的に血管が少ない組織といえます。腱は白色、筋は赤色だとすると分かりやすいと思います。
腱への血液供給は腱周囲の結合組織(パラテノンや滑液鞘)が担っていると考えられます。
腱自体の血行は少ないため修復能は低いと考えられます。
また、腱の神経支配は腱周囲から得られるもので、腱実質部に至ることはないがその表面に停止します。
さらに、腱には張力の変化を感知する固有受容器であるゴルジ腱器官があります。
特性(粘弾性)
腱は粘弾性を持っており、粘弾性を持つ物質は与えられた力学的負荷の速度に依存すると言われています。
言い換えると粘弾性を有する物質は負荷の速度がゆっくりであれば変形しやすく、負荷の速度が速くなると変形しにくいということです。
これによって起こる現象としては、
- 負荷の速度が遅ければエネルギーを吸収しやすく力の伝達効率は悪い
- 負荷の速度が速ければより腱の剛性が高まり力を伝達しやすくなる
つまり、腱は伸長される時間が短いほど弾性エネルギーを蓄えやすくなります。
この伸長性局面から急激に短縮性の運動を行うことで爆発的なエネルギーを生み出すことをSSC(ストレッチショートニングサイクル)と言います。
これを利用したトレーニングがプライオメトリクストレーニングです。
まとめ
腱はコラーゲン線維が直列に配置されているため、単一方向への負荷に対応しやすい構造をした組織です。
組織としては粘弾性を有しているため引き伸ばされる速度によってエネルギー効率が変わるということを覚えておくといいと思います。
また、腱に自体は血行に乏しい組織であるため一度損傷してしまうと修復することが難しいのでそこらへんも考えた治療法を選択できるといいですね。
以上です、ありがとうございました。